【後編】バリューブックスさまにインタビュー 〜よりよい本の循環をつくるために〜

※こちらの記事はバリューブックスさまへのインタビュー記事の後編です。前編の記事をまだご覧になっていない方は先にそちらをご覧ください!

▼前編はこちら
【前編】バリューブックスさまにインタビュー 〜よりよい本の循環をつくるために〜

社内外からの反響

小林 ──先ほどの話にも通じますが、ブックギフトやチャリボンなどの活動を続けていく中で、どのような反響や変化がありましたか?

中村さん

こうした活動には、社内外を問わず多くの共感が寄せられています。バリューブックスを好きでいてくださるきっかけの一つにもなっていると感じますね。

社内では、ブックギフトの取り組みに業務の一環として自由に参加できる仕組みがあります。子どもたちに本を届ける体験を通して、「自分たちの仕事が世の中の役に立っている」と実感できることは大きいです。また、本を喜んで受け取る場面に立ち会うことで、日々扱っている本への愛着や関心も深まります。

社外でも、活動に共感して応援してくださる方が多く、企業としての信頼や支持につながっています。
本は、知恵や学び、自分の楽しみや人生の糧になるものとして思い入れを持つ人も多いです。そのため、手放す際も行き先を大切に考える方が少なくありません。そうした想いに応える仕組みとして、チャリボンやブックギフトが選ばれているという実感があります。
特にチャリボンは、本を売った対価が自分の利益ではなく寄付になり、本自体は再循環していく仕組みです。あえてそこに託してくださる方がいて、結果として会社の成長にもつながっています。

小林 ──私も本に思い入れがあって、なかなか手放せないタイプです……。バリューブックスさんは、売った本をオンライン上で管理できる仕組みもありますよね?

中村さん

はい。「オンラインライブラリ」という機能です。本に思い入れがある方にとって、手放すことは簡単ではありません。そこで、お客様が売った本の情報を自動的に記録し、後から「どんな本を持っていたか」を振り返られるようにしています。

実際に手元から本がなくなっても、「あの時こういう本を読んでいたな」と記憶をたどることで、自分の興味や思考の履歴を残せます。寂しさや喪失感をやわらげる効果もあり、本を気持ちよく整理していただくための支えになればと考えています。

オンラインライブラリの宣材写真


自社ECを軸にした「よりよい本の循環」づくり

小林 ──本を捨てたくないという思いから、さまざまな形でよりよい本の循環を目指してきたバリューブックスさんが今、特に力を入れていることや、今後の展望を教えてください。

中村さん

やはり大きなテーマは、最初にお話しした「よりよい本の循環」です。日々の課題に対応しながらも、その全体像をどう形にしていくかが重要だと考えています。

そのためには、自分たちで直接お客様に本を販売する力を強くしていくことが欠かせません。
現在はAmazonや楽天など大手プラットフォームを主力として販売をおこなっています。大手の力を活用できるというメリットもありますが、その一方で手数料がかかったり、お客様と直接つながれなかったりする面もあります。

そこで今後は、自社のECサイトで購入していただけるお客様を増やすことが大きな課題です。
ここ数年は、在庫連動の仕組みや販売促進のコンテンツを整え、新刊も取り扱いを始めました。利用者も徐々に増えてきています。
自社販売を拡大できれば、手数料を抑えられ、利益を社会への還元や新たなチャレンジに充てることができるので、今はそこに一番力を入れています。

小林 ──ECサイトでは新刊も取り扱うようになったんですね。

中村さん

はい、ただすべてを仕入れるのは難しいので、厳選して取り揃えています。
たとえば、自社のYouTubeチャンネル「積読チャンネル」では、スタッフの飯田が本を紹介する動画を配信しており、紹介した本は毎回100〜200冊ほど用意して販売しています。

また、YouTuberやポッドキャスターをスポンサーとして応援し、その方々が紹介する本を仕入れた特設ページも作って販売しています。「COTEN RADIO」さんなら「コテンラジオ書店」、「ゆる言語学ラジオ」さんなら「ゆる言語学ラジオ書店」、三宅香帆さんなら「三宅香帆書店」といった具合に、ECサイト上に架空の書店を作り、本を並べて販売しています。

ECサイトの宣材写真


 “本”がつなぐ新しい支援のかたち

小林 ──最後に、おてらおやつクラブに今後期待していることや、一緒に挑戦してみたいことがあれば教えてください。

中村さん

現在ご一緒している「ブックギフト」プロジェクトは、自分たちの目指す「よりよい本の循環」に直結する活動だと感じています。今後も継続していきたいですし、さらにもう一歩踏み込んで、新しい取り組みも探していけたらと思います。

たとえば、おてらおやつクラブさんの普段のおすそわけ(食材や日用品)に加えて、本を少しずつ届けるような形です。本が日常の中に自然に入り、悩んだときに「本を読んでみようかな」と思える。そんな習慣ができれば、人生の幅や頼りどころが増えていくと考えています。
短期的な成果としては見えにくいですが、家庭のなかで本が受け入れられ、行動や心情が変わっていく過程を追えるようなプログラムを一緒につくることができたら、本の力を最大限に活かせる支援になると考えています。

上村 ──最初にブックギフトを始めたときは、私たちは食品を中心に送っていたので、本のおすそわけがどれだけ喜ばれるのか、正直不安がありました。
でも実際に配ってみると、「中古の本しか買ったことがなかった」「図書館まで行くのが難しかった」という声を多くいただきました。改めて、本を届けることがこんなにも喜ばれるのかと驚きましたし、食品と同じか、それ以上に大切なことだと感じています。
物流面でも、バリューブックスさんはすでに仕組みをお持ちである一方、私たちはおすそわけの配送費の負担に悩んでいます。今後は物流面でも連携しながら、本も届ける取り組みも考えていきたいです。

中村さん

おてらおやつクラブさんの支援活動の中心は、生きていくうえで最低限必要な「衣食住」のなかの「食」の部分ですよね。一方、バリューブックスが扱う「本」は、なくても生きてはいけますが、あることで生活を豊かにしてくれる存在だと考えています。
というのも、僕自身がその価値を体感した一人だからです。

もともと僕は勉強をほとんどしてこなかった人間で、大学にも行っていません。そんな状態だったので、30歳でバリューブックスに入社するまで、ほとんど本も読んでこなかったんです。
ところが入社後、本に触れる機会が増え、気づけば家中が本だらけになるほど読むようになりました(笑)。本を読み始めてから、考えの幅が広がり、自分にできることも大きく変わったと感じています。この変化を何らかの形で“エビデンス”として示すことができれば、本の価値をより多くの人に伝えられるはずだと強く思っています。

実際に「ブックギフト」プロジェクトで本を受け取ったご家庭からの声


インタビューを終えて

本が大好きな自分にとって、「よりよい本の循環」をあらゆる角度から実現しようとするバリューブックスさんの姿勢はとても印象的でした。単に本を循環させるのではなく、本を売る人・読む人・寄付する人、関わるすべての人が気持ちよく本を送り出せる仕組みをつくろうとしているところに強く共感しました。おてらおやつクラブもまた、形は違えど「想いが巡っていく循環」を目指しているので、とても学びの多い回でした。


日頃からの多大なご支援に加えて、今回のインタビューにもご協力くださったバリューブックスの皆さまに、改めて感謝申し上げます。

このたび、おてらおやつクラブ代表・松島靖朗を題材にした新著『おやつのおぼうさん おすそわけで子どもたちを笑顔に!』(12月9日(火)発売)が刊行されることとなりました。

さらに、バリューブックスさんでのご購入分については、売上の約2割が「おてらおやつクラブ」への寄付となり、全国のひとり親家庭の子どもたちに「おすそわけ」を届けるための運営費として、大切に活用させていただきます。
ぜひ本を通して活動への理解を深めていただき、あたたかなご支援の輪が広がることを願っています。

▼書籍の購入方法や詳細についてはこちらをご覧ください。
https://otera-oyatsu.club/2025/10/publication-snack-monk/


おてらおやつクラブではこれからも、一つ一つのご縁を大切にし、様々な企業さま・個人さまと協力して子どもの貧困問題の解決に取り組んでまいります。

これまでの企業との取り組みは、以下の「企業との取り組み」ページからご覧いただけます。
また、おてらおやつクラブと連携して子どもの貧困問題に取り組みたいという企業さまがいらっしゃいましたら、ぜひお問い合わせフォームよりご連絡ください。

引き続き応援のほどよろしくお願いいたします。

▼これまでの企業との取り組み
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