認定NPO法人おてらおやつクラブ(田原本町、代表理事:松島靖朗)では、2025年も、当団体から直接的に支援を受ける全国の世帯を対象にアンケート調査を実施しました。家庭を取り巻く環境や、支援とのつながりに対する意識・実態を継続的に把握し、今後の活動の示唆とするため、2020年から毎年行っている調査です。
今年度の調査(対象世帯数:2,909世帯)からは、「支援は“何を届けるか”だけでなく、“どれだけ早く届くか”によって、その意味合いが大きく変わる」という示唆が、あらためて浮かび上がりました。
本記事では、調査結果の概要とともに、「困ったとき、すぐ届く」支援が家庭に与えた影響、そしてその結果を受けて私たちが見直した支援のあり方についてお伝えします。
■調査結果サマリー
今回の調査からは、下記の3点が主なポイントとして挙げられます。
1.今年は、事業全体の持続性を優先し、限られた原資を既存の支援継続に充てたことから、新規世帯への積極的なアウトリーチは抑制的な運用へ。その結果、調査対象世帯のうち「おすそわけを2回以上受け取った家庭」が8割強を占めた。
2.初めておすそわけを受け取る家庭には「できるだけ早く届ける」ことを重視した結果、「困ったときに助けを求められる」「孤立感が和らぐ」など、主要な成果指標すべてで前回調査を上回る結果が見られた。
3.自由回答では、賃上げ等により公的支援の対象から外れてしまったことへの戸惑いや、身近に相談先・支援先がないことへの不安、長期化する物価高による生活の厳しさが多く語られた。制度や支援の「対象」から外れやすい家庭ほど、困難が見えにくくなっている現状がうかがえた。
▼調査報告書PDF(詳細はこちらをご覧ください)

■「早く届くこと」が支援になるとき
今回の全国調査で私たちが特に注視したのは、初めておすそわけを受け取る家庭に対し、スピードを重視して対応した結果、成果指標すべてでスコア向上が見られた点です。
2024年度は、おすそわけ配送費の軽減を目的に、可能な限り同一配送エリア内(ヤマト運輸の規程による)で発送できるよう、マッチングの徹底を行ってきました。
エリア内での循環が進むほど、おすそわけの移動距離は短くなり、配送費用を抑えることができます。
しかしその一方で、たとえば滋賀県(関西エリア)の家庭から申し込みがあった場合、本来であれば隣接する岐阜県(東海エリア)のお寺からすぐに発送できる状況であっても、同一配送エリア内でのマッチングを優先した結果、発送までに時間を要するケースが生じました。実際には、申し込みからお届けまでに1か月以上かかってしまうこともありました。
その結果、支援を必要としている「たすけて」の声にタイムリーに応えることができず、そのことは、支援が本来持つはずだった安心感を十分に届けられなかった可能性につながったのではないかと、私たちは受け止めています。
本来、支援が持つはずだった安心感とは、困ったときに声を上げてよいこと、自分の状況が誰かに受け止められていること、そして一人きりではないと感じられることの積み重ねだと、私たちは考えています。
■支援のあり方を見直す──2025年度の方針転換
こうした反省を踏まえ、2025年度は、初めておすそわけを受け取るご家庭に対しては「スピード重視」で届ける方針へと転換しました。
具体的には、通常よりも遠方(エリア外)のお寺さまからも「おすそわけ」を配送できるよう、配送システムのエリア制限を緩和しました。
その結果、配送距離の伸長により配送単価は一箱あたり135円上昇しましたが、「困ったときに助けを求められる」「孤立感や孤独感が和らぐ」「相談先が複数ある」といったすべての項目において、前回調査を上回る結果が得られました。

*奈良県の寺院から配送する場合、通常は関西エリア(大阪府、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県、兵庫県)の家庭への配送に限っています。2025年度からはこのエリア制限を一部緩和し、関西エリアに隣接する中部・北陸・中国・四国の各エリアへも配送できるようにしました。
■ 今後に向けて──3つの方向性
この調査結果を受け止めながら、限りある予算や物資を最大限に有効活用し、支援の満足度と配送コストのバランスをどのように保つか。
おてらおやつクラブでは、以下の3つの方向性を軸に、支援活動を進めていきます。
・「スピード」を価値として定義する
「早く届くこと」は単なる効率化ではなく、困ったときにすぐ頼れるという安心感を届ける行為だと、私たちは捉え直します。
初めて支援につながる家庭にとって、迅速なおすそわけは、「あなたの声は大切に受け止められている」というメッセージでもあります。受け取る人の尊厳を守る支援として、「スピード」を価値に位置づけ、物流システムやオペレーションを再設計し、“駆け込み寺”として機能する仕組みをつくっていきます。
・デジタル・外部連携による規模の拡大
限られた原資を最大限に生かすため、企業さまからの直接配送連携や情報提供など、「お寺からのおすそわけ」という形に固執しすぎない支援のあり方を模索します。
誰もが「おすそわけ」に関われる社会を目指し、ソーシャルギフトやシステムを活用した仕組みを通じて、市民活動としての間口をさらに広げていきます。これまで常に参加の間口を広げてきたおてらおやつクラブのプラットフォームだからこそできることに、これからもチャレンジしていきます。
・「伴走」の再定義
初回のおすそわけをきっかけに生まれたつながりを、一過性の支援で終わらせないため、行政や地域団体との協働をさらに深めていきます。
おてらおやつクラブが単体で支えるのではなく、複数の主体が役割を分かち合いながら成果を生み出すコレクティブ・インパクトの考え方を踏まえ、地域全体での見守り網を編んでいきます。
お寺を起点に、人や制度、支援がつながる「(仮)地域HUB」としての役割を明確にし、継続的な伴走支援の実現を目指します。
今後も、可能な限りお困りのご家庭の気持ちや状況に寄り添いながら、困りごとを抱えたときに気兼ねなく「たすけて」と言える、「たよってうれしい、たよられてうれしい。」社会を目指して活動を続けていきます。
引き続きお力添えをお願い申し上げます。
*本調査に関するお問い合わせ
以下のお問い合わせフォームからご連絡ください。
https://otera-oyatsu.club/contact/
*おてらおやつクラブでは現在、困りごとを抱えるご家庭から寄せられる「たすけて」の声に、継続的に応えていくため、活動を支えてくださるご寄付をお願いしています。
いただいたご寄付は、「困ったとき、すぐ届く」支援を実現するための配送費や運営費として、大切に活用しています。
ご支援の方法や寄付の種類については、以下のページでご案内しています。
もしよろしければ、ご覧いただき、お力添えいただけますと幸いです。
https://otera-oyatsu.club/donate/


