代表メッセージ

お寺の住職の生活は、まさに24時間お寺で起こるさまざまなことと関わる 生活です。住む場所もお寺ですから、ありがたいことに年がら年中家族と一 緒に食事をすることが基本です。家族全員で、食事の前後に「いただきます」「ごちそうさま」と作法をするのですが、 二歳の息子の念仏もそれなりに形になってきました。 でもどうでしょう? ここに信仰心や宗教的な意味はあるでしょうか? 彼にとっては早く作法を終えて、ご飯を食べたいということなのでしょう。 子どもたちにとって食事がどれだけ楽しみな時間であるか・・・と思う日々 です。 ここ数年、子どもの貧困や格差社会というキーワードでさまざまな議論や活 動が増えてきました。 「国内で餓死があるなんて・・・」その衝撃から仔細を考えずに動き始めた活動「おてらおやつクラブ」も、少し冷静になって振り返ってみると多くの方々からその意義や意味付けをしてもらっているように感じます。 当初は多くのメディアに取り上げられるも「坊さんもたまにはええことするやん!」と平生の期待値の低さの顕在化に苦笑いでした。最近はある種のブームも一段落し、「○○という意味で可能性を感じます」「まるで私たちが長年取り組んでいる○○のようですね」とその人それぞれのフィールドから「おてらおやつクラブ」の可能性、21世紀におけるお寺の役割を教えてもらう機会が増えてきています。 貧困と一言で言ってもその状況は様々です。活動をすすめることで痛感するようになったのは、貧困は単に経済的に貧しい状況を言うのではなく、周りに助けを求めることができず孤立状態に陥ってしまうひとり親家庭の状況です。育ち盛りの子どもたちにとって食の問題は深刻です。子どもたちに不自由させないために、ダブルワーク・トリプルワークをされるお母さんたちに日々の余裕はありません。 貧困は次世代へ連鎖を引き起こすという問題もあり、家庭のみならず、社会全体として向き合っていかなければならない問題です。子どもたちのおかれている状況は年々深刻になっています。 「10年後の子どもたちの姿を見るのが楽しみですね。それまでは責任をもって関わっていきたいと思います」当活動にスタート当初より賛同、ご参加くださっているお坊さんの一言です。 考えてみれば、多くのお寺は数百年の歴史があり、その中で数千年、数万年の時間軸をもつ仏の教えという物語を語り継いできた場所です。現代社会における目を背けたくなるような大きな課題に、ようやくお寺の出番がやってきたのではないでしょうか。 皆さまどうぞ一緒に考え、行動していきましょう。あなたにできることから。

おてらおやつクラブ代表 松島靖朗