ともに生きる・人
深堀麻菜香さん

フリーマガジン『てばなす』紙面でお伝えしている全国各地の動きを、おてらおやつクラブWebサイトでも「地域だより」としてお伝えしていきます。

子どもたちの希望を叶える

深堀さんは現在、4団体にて子どもの貧困問題に取り組まれています。

「子どもの頃から子ども食堂や学習支援を手伝ってきました。高校生でボランティアをしていたことが珍しがられて、講演会の依頼もいただけるようになって。今では子どもたちを直接支援するだけではなく、実態を世の中に伝える講演活動にも力を入れています」

様々な角度から子どもの貧困問題に取り組む深堀さん。彼女の異色の経歴にはひとつの特徴があります。それは、求めに応じて活動を行うということ。「子どもたちが必要としていることを、その時々に合わせてやっていくという感じですね」

実際の活動の中でも、深堀さん主導で何かをはじめることは必ずしも多くないと言います。「貧困家庭の子どもたちは、お金が無くていろんなことをあきらめてきた経験があります。私自身も生活保護世帯で育ったので、その気持ちはよく分かります。親の顔色を伺ってやりたいことを言い出せない子や、『どうせできないでしょ』とあきらめることに慣れてしまった子も多いです。だからこそ子どもたちの発信を全力で受け止める。やりたいと言ったことを全部実現していったら現在の形になりました」

子どもの貧困問題の本質

「子ども食堂にはいろんな子どもや大人が来てくれます。貧困だから食べられない子もいますが、実はそうした子は一部です。両親が夜遅くまで働いていて、普段はひとりで夜ご飯を食べている子もいます。話し相手を求めて、乳幼児を連れたお母さんもいらっしゃいます」

深堀さんによれば、子どもの貧困の本質はお金の問題ではありません。「根っこの部分には社会的な孤立がある」と深堀さんは話します。地域のつながりが弱まっている現代では、人々は互いに孤立しがちです。「社会的に孤立していると、入ってくる情報は少なくなります。選択肢が少なくて視野を広げられないことのほうが、実は問題の本質なんじゃないかなと思っています」

例えば、大学進学を考える際、社会的孤立は深刻な問題です。漠然と進学したいという想いを抱えながらも、進学するためには何が必要なのか、どのような奨学金があるのか、それを誰に聞けばいいのか分からない子どもたちがたくさんいます。「だからこそ、一緒に考えたり悩んだりしてくれる人の存在が大切なのです。子ども支援というと大袈裟に聞こえますが、ただ同じ時間と空間を共有するだけでいいのではないでしょうか。何か聞いた時に一緒に悩んでくれる大人の存在が大切だと思っています」

誰かが気張って何かをしてあげるのではなく、人がただ一緒にいられる場所。深堀さんが目指すのは、そうした空間や社会づくりなのかもしれません。

地域の人たちが出会い直す場

地域社会のつながりが弱くなり、子どもを見守る目の数も確実に少なくなっています。「地域に人はたくさんいますが、日常的に声掛けできる人の数は限られています。誰かの異変を知るためには、その人の普通を知っていなければいけないのに」

いま、色々な背景を持った大人や子どもがつながり合える場所が求められています。「子ども食堂もそうした場所のひとつです。子どもたちはそこで、自分の地域に住んでいる大人を知っていきます。地域の人たちが出会い直す場でもあります」

深堀さんはそうした観点からおてらおやつクラブに共感してくださっています。「社会的孤立を防ぐために、地域のお寺さんや支援団体を通して『おすそわけ』を送っていますよね。『遠くの親戚より近くの他人』という言葉もありますが、地域にある支援団体やお寺さんとつながることで異変を知ってもらえる子どももいます」

おそなえものを分け合うことは、地域の人々がつながり合うこと。深堀さんは「複雑な手続きは不要で、メールですぐに支援を求められるのが魅力です。それをひとつのきっかけにして、お母さんたちや子どもたちが一歩踏み出すきっかけになれば」と話します。「心理的にハードルの低いところから利用してもらって、お手紙やメールのやりとりを通して少しずつ関係を作っていく。切れそうで切れないつながりを維持できるのが、おてらおやつクラブさんの特徴なのかなと思っています。地域に広がる支援団体やお寺さんを拠り所として、地域の人がつながる可能性を秘めているのが素敵ですよね」

家庭の状況はそれぞれ異なり、食料や物資を届ければ解決する問題ではありません。新型コロナウイルスの影響もあり人々が孤立しがちな現代、深堀さんのような見守りの目に心強さを感じました。(文・宮崎ゆう)

6月よりおてらおやつクラブ事務局に加わりました。(インタビューは4月末時点)

プロフィール

北海道札幌市出身・在住。貧困当事者として生活保護を受給しながら育ち、自身の経験を様々な場で発信しながら子どもたちの声を代弁している。認定NPO法人kacotam、NPO法人訪問と居場所漂流教室、公益財団法人子どもの貧困対策センターあすのば、ぴらけしみんな食堂などの団体で、札幌市を中心に北海道各地で困難を抱える子ども・若者と関わる支援活動を行なっている。そのほかメディア出演や講演活動など。

フリーマガジン『てばなす』第5号インタビュー記事より

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