全国の家庭や団体へ支援を行うおてらおやつクラブの活動には、各地の活動拠点となる賛同寺院さまは欠かすことのできない大切な存在です。
賛同寺院の皆さまは、どんなきっかけで活動に参加してくれたのか。どのような考えを持って活動に取り組まれているのか。活動を通じて何を感じ、どう変化したのか。日頃は表にでることの少ない「お寺の想い」をインタビューし、より多くの方にお届けしていきます。
第3弾は、京都府 實光院(じっこういん) 天納玄雄(あまの・げんゆう)さんにお話を伺いました。
▼第1弾の寺院インタビュー 壽徳寺 松村妙仁さんの記事
https://otera-oyatsu.club/2024/01/temple-interview-jutokuji/
▼第2弾の寺院インタビュー 宝林寺 羽田慶仁さんの記事
https://otera-oyatsu.club/2024/03/temple-interview-hourinji/
—おてらおやつクラブは活動開始から10年が経ち、今年3月に登録寺院数が2,000か寺に到達しました。天納さんは記念すべき登録2,000か寺目のお寺さまです!おてらおやつクラブとはどのようなきっかけで出逢われたのでしょうか。
2024年3月、天台宗京都教区の人権研修会でご講演いただいたことがきっかけです。教区の社会主任がおてらおやつクラブの活動を目にし、「お寺」と「社会」の2つの課題を解消することができる取り組みだと研修会を企画したことで、初めておてらおやつクラブを知りました。
—講演の後、すぐに寺院登録してくださりありがとうございます。講演で印象に残ったこと、登録の決め手は何ですか?
講演の冒頭、仏教学者 中村元(なかむら・はじめ)さんの言葉を引用しながら、「仏教では慈悲の理想は説くけれども、それをいかに実践すべきかということについては、現代の仏教教団は教えてくれない」というお話をされました。このお話を聞き、私が修業時代に身近で教えを学ばせていただいた「侍真(じしん)」と呼ばれる僧侶の言葉を思い出しました。
「侍真」は、浄土院という天台宗開祖 最澄さまの御廟(ごびょう)を護るお寺に12年間こもり食事のお供え・お祈り・掃除などの行を実践するお坊さんのことです。その侍真さんに「徳を積まずに回向や祈願の験(げん)を得られるのか(効果が出るのか)」と言われたことがありました。慈悲の実践のためには、お祈りすることだけにとどまらず、さまざまな方法で徳を積むことを続け、自分を高めていかなければならないと考えさせられました。
おてらおやつクラブに参加して實光院が社会貢献に携わるとともに、自らも寄進を通して徳を積み、拝んでいくための力をつけていくためにも、おてらおやつクラブに登録しました。
—子どもの貧困問題を始め、さまざまな社会問題に対する活動に以前から関心を持たれていたのでしょうか?
子どもの貧困問題自体は知識として知っている程度でした。夏休みや冬休みなどの長期の休みには困りごとを抱える家庭が増えるだろうなとか、社会福祉協議会さんや支援団体さんが身近で活動されているなとか、漠然とした知識だけです。
最澄さまのお言葉に「照千一隅(しょうせんいちぐう)」というものがあります。自分のできることを全うすることで社会を良くしていく、それを天台宗としては大切にしています。例えば托鉢を通して慈善団体などへの支援を宗全体で実施しています。各寺院それぞれが独自に社会活動を行っているというケースも多いですね。
—天台宗の「照千一隅」の運動の一環として、子どもの貧困解決に向け私たちとともに活動を広めていただけると心強いです。今後はどのようなことを大切にしていきたいですか?
實光院は観光寺院のためお檀家さんがいません。日々の勤行で供える仏飯や月供の乾物などはお寺で用意しています。そのため、「おすそわけ」を届けることでおてらおやつクラブに参加するのは難しいものの、配送費をまかなうためのご寄付で協力したいと思っています。
また、観光寺院だからこそ広報的にも協力できると考え、募金箱やのぼり旗の設置を希望しました。お檀家さんはいませんが、参道の商店を中心とした地元観光協会とのつながりもあります。そこにおてらおやつクラブのリーフレットなどを置いてもらえるかもしれませんので、今後子どもの貧困問題を周知する面で可能性を広げていきたいですね。
—おてらおやつクラブへの協力方法はおすそわけを送ることだけだと思われがちなんですが、実は色々な方法があるんです。實光院さんのように、おそなえものがなくても募金箱の設置やご寄付でのご協力で関わっていただけるのは本当にありがたいです。まだおてらおやつクラブに参加されていないお寺さまへメッセージをお願いします。
支援の形はいくらでもあると思っています。おやつなどを寄贈したり、寄付をしたり、リーフレットを置くだけでも協力につながります。難しく考えず、気軽に参加してみてください。
—いろいろな支援方法で参加してくださるお寺さまを増やせるよう、私たちも活動を続けていきます。では、最後に、活動を通して子どもたちに伝えたいことを教えてください。
目の前のことだけがすべてではありません。目の前が真っ暗に思えるようなときでも、自分のことを助けたいと思う人も確かにいるんだということを子どもたちに伝えたいです。
困りごとを抱えるご家庭からの「たすけて」の声に応えていくためには、より多くのお寺さまのご協力が不可欠です。全国のひとり親家庭に「おすそわけ」を届けるため、引き続きお寺さまのご参加をお待ちしております。
▼ おすそわけの発送以外で関われることはこちらをご覧ください。
https://otera-oyatsu.club/temple-regist-2000/#other