賛同寺院の想いを聞く 〜壽徳寺・松村妙仁さん おてらおやつクラブとの出会い、変化〜

全国のご家庭へ支援を行うおてらおやつクラブの活動には、各地の活動拠点となる賛同寺院さまは欠かすことのできない大切な存在です。

賛同寺院の皆さまは、どんなきっかけで活動に参加してくれたのか?どのような考えを持って活動に取り組んでくださっているのか。活動を通じて何を感じ、どう変化したのか。日頃は表にでることの少ない“お寺の想い”をインタビューし、より多くの方にお届けしていきます。

第一弾は、本企画を始めるきっかけをくださった壽徳寺(じゅとくじ)松村妙仁(まつむら・みょうにん)さんにお話を伺いました。


—おてらおやつクラブに協力しようと思われたきっかけはなんですか?

松村さん

最初のきっかけは、お寺のおそなえものが無駄にならないように、という思いからでした。おそなえものが無駄にならず困りごとを抱えるご家庭の笑顔に変わる、という仕組みはとても良いなぁと思っています。

私は福島県のお寺で住職をしていますが、お寺での行事や檀務は基本的にひとりでこなしています。実は私も誰かに頼ることが苦手で、ひとりで何でもやらなきゃと思いがちなんです。ですが、お寺の行事やイベントなどの開催を継続していく中で、「手伝うよ」と言ってくださる方が増えはじめました。誰かに「手伝うよ」と言ってもらえると、とても助かりますし、頼ることも大事だなと思うようになりました。

そういった自分の経験からも、「私も困っている誰かの少しでも力になれれば……」と考えています。特に、お寺のおそなえものがおさがりとしておすそわけし、みんなで少しずつ力を出し合うことでお母さん・お父さんや子どもたちの力になれることがうれしいですね。

また、おてらおやつクラブに関わる中で、自分の考えを伝えることも大事かなと思います。事務局の皆さんにも、自分なりに気づいたことや「もっとこうした方がより良くなるのでは」と積極的に意見をお伝えしています。皆が気がねなく考えを発言することで、多様な視点で物事を考えられたり、自分の思考を他者と共有することで新たなアイデアが出てくると思っています。


—実はこのインタビューも、松村さんからのご提案が出発点なんですよね。以前、おてらおやつクラブを通じて新たなご縁ができたとおっしゃっていましたが、具体的なエピソードはありますか?

松村さん

コロナが大流行している時、各地の空港が閉鎖状態になったことがありましたよね。その影響で、空港のお土産品が売れ残ってしまうことが課題として出て、お菓子を医療従事者に差し入れする活動があったのを覚えていらっしゃいますか?この活動でお菓子を受け取っていた福島県内の病院にお勤めの方から、「スタッフでは食べきれないので、おてらおやつクラブで活用してください」と寄贈のお申し出があったんです。

病院からお寺までは1時間以上かかりますが、わざわざ届けてくださいました。コロナ禍という背景もあり、過酷な環境で勤務されている医療従事者の方が、わざわざお寺まで持って来てくださったことに感動しましたね。おてらおやつクラブの活動をしていなければ出会えないご縁ですし、私自身も温かい気持ちになりました。

—遠くから届けてくださるなんて、すごい行動力を持った方ですね。壽徳寺の発送会に参加してくれる人は、どこから知り、来てくださっているのでしょうか?

松村さん

お檀家さんやボランティア活動を通してつながった地域の方、お寺の行事やイベントに参加してくれる方々が、主に発送会に参加してくださっています。
ヨガや写経などの参加者には後日お礼のメールを送るようにしているのですが、そのメールにさりげなく次回の発送会の情報も載せて周知しています(笑)そのご縁でおてらおやつクラブの活動を知ってもらえるきっかけにもなっています。

他にはおてらおやつクラブのリーフレットやのぼりも見やすいところに掲示しています。また、ご自身も子どもの頃ひとり親家庭で苦労したという方が、今度は自分が助ける側になりたいとおっしゃって参加くださることもありますね。


—助けられていた人が助ける人になるというのは、おてらおやつクラブのキャッチフレーズである、「たよってうれしい、たよられてうれしい。」と通じますね。
先ほどお寺の行事・イベントのお話が出ましたが、壽徳寺ではたくさんイベントが開かれていますね。かなり負担も大きいと思うのですが、イベントを開催する理由はあるのでしょうか?

松村さん

イベントを開催するのは私自身の楽しみでもあります。実は私は前職でイベントを企画運営する会社に勤めていたため運営には慣れており、好きなことでもあります。自分自身が無理なく、楽しくやれることが大前提でやっています。

一方で、壽徳寺がある地域は人口減少や高齢化もすすんでいますので、何もしなければ今後お寺を護っていくことが大変難しくなっていく、という現実的な背景もあります。お檀家さん以外の方も、どなたでも気軽にお寺に来てほしいな、という思いもあり、さまざまな接点を設ける機会として催しを開いています。

行事に来てくださった方々におてらおやつクラブの活動を発信していると、次の行事の際におすそわけを持ち寄ってくださることもあって、とても嬉しいですね。なんでもそうですが、継続すること、場を開くことは大事だなと実感しています。


—行事の際に寄贈いただけるのは、おてらおやつクラブに参加したことによる変化ですね。おてらおやつクラブに関わってから他に変わったことはありますか?

松村さん

おてらおやつクラブに関わることでお寺に心寄せてくれる方が増えてきていると感じます。たくさんのお米を持ってきてくださる農家のお檀家さんもいらっしゃいますし、日常のふとした瞬間につながりが増えていくのを感じています。

そうしたつながり・関心を持ち続けていただくためには、協力してくださる皆さんに「してもらいっぱなし」にするのではなく、こちらもお手伝いしたり、結果もしっかり伝えることが大切だと思います。

具体的には、届けた先の団体さまやご家庭からの「声」をお伝えしたり、現場の様子をお話するなどですね。結果をしっかりとお伝えすることでまた次につながり、助けていただけることもあるので、支援を受けられた方々の「声」を発信していくことの大事さを感じています。


—結果や「声」を伝えることは、おてらおやつクラブでも大事にしているところですので、これからも折々に発信をしていきたいと思います。最後に、松村さんから、おてらおやつクラブに期待されることはありますか?

松村さん

貧困の現状は目に見えにくいので、まだまだ社会に伝わり切っていないのが現状だと思います。引き続き、さまざまな事情で困難を抱える方々の現状や想いを発信し続けていくことが大事ではないでしょうか。

それに加えて、より多くの方々が関わってくださることで、よりおてらおやつクラブの活動が広がっていくと思っています。各ご寺院のみなさんも「難しそう」「いっぱい送らなきゃ」といったイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありませんので、少しだけでも、できることから加わってくださるとうれしいなと思います。

*寺院登録はこちら
https://otera-oyatsu.club/temple/#content01


日頃からの「おすそわけ」にご協力いただくほか、活動をより良くするご意見・アイデアを提案してくださる壽徳寺・松村さんに、改めて感謝申し上げます。

おてらおやつクラブではこれからも、こうした一つ一つのご縁を大切にし、様々なお寺さまと協力して子どもの貧困問題の解決に取り組んでまいります。

どうか引き続き応援のほどよろしくお願いします。


*おてらおやつクラブでは現在、困りごとを抱えるご家庭からの「たすけて」の声に十分に応えていくため、継続的に活動を支えてくださるマンスリーサポーターを募集しています

継続寄付ご案内の専用ページを立ち上げ、私たちが過去に受けとったお母さん・お父さんからのメッセージをもとに編集した、3人のお母さんのエピソードをつづりました。

ぜひ以下URLよりご一読のうえ、お力添えいただけますと幸いです。
https://otera-oyatsu.club/monthly/