
全国の家庭や団体へ支援を行うおてらおやつクラブの活動には、各地の活動拠点となる賛同寺院さまは欠かすことのできない大切な存在です。
賛同寺院の皆さまは、どんなきっかけで活動に参加してくれたのか。どのような考えを持って活動に取り組まれているのか。活動を通じて何を感じ、どう変化したのか。日頃は表にでることの少ない「お寺の想い」をインタビューし、より多くの方にお届けしていきます。
第5弾は、山形県 持地院(じちいん) 大滝宗徳(おおたき・むねのり)さんにお話を伺いました。

—おてらおやつクラブとはどのようなきっかけで出逢われたのでしょうか。
幼稚園をやってるもんですから、お供え物を幼稚園の職員や子どもたちと分け合うこともあるし、お檀家さんがお茶を飲まれる時に食べていただくこともあります。どうしてもお供え物の活用に困ったときはコンポストで堆肥にしていることもありました。それでもやはりお供え物の活用に追いつかない時もありました。
ある時、お寺の勉強会に行ったら、おてらおやつクラブの資料がありました。その時は特に登録はしなかったのですが、その後インターネットなどで2回3回とおてらおやつクラブの文字が飛び込んできました。ちょっと調べてみたら、お寺の「ある」と社会の「ない」をつないで活動しているということで。「あ、これだな」と思い、5年ほど前から活動に参加しました。
—そういったきっかけがあったんですね。「おすそわけ」活動を始めてよかったことや印象に残っていることはありますか。
年間10個か20個ぐらい発送しているのかなと思ってたんですけど、事務局で集計してくれている今までの発送数を見ると、4年半の間に170個発送していました。うちの妻も一生懸命パッキングしてるというのもあるんですけどね。
最初おすそわけを送る送料がかかってたんですよ。ところが、おてらおやつクラブのシステムを利用して送料を一括事務局で払うようになったもんだから、私たちは送料がかからなくなったんですね。(※)その分賛助会費として寄付での支援はさせてもらってますが、それで一気におすそわけの数が増えたんです。お寺の負担が少なく、たくさん子どもたちにおすそわけを送れるようになったのはよかったですね。
(※お寺さまが発送費を負担しておすそわけを送っていただく方法もあります。)
—ご家族で活動にご協力いただきありがとうございます。その中で心がけていることなどがあれば教えてください。
最初の頃、賞味期限の記載がないものを送ってしまうこともありました。その時、事務局の方から注意を受けまして。すごく反省しました。そこからはきちんと仕分けも丁寧にするよう心がけています。そして、受け取った人たちが気持ちよく嬉しい気持ちになってくれるということを想像しながら送っています。
家庭への場合だとお菓子だけ送っても物足りないかもしれないと思い、やっぱりお米とか麺類とかいろんなものも入れて送るようにしております。檀家さんも皆さん食べ物だけじゃなくて、ティッシュペーパーなどの消耗品を「これも送ってください」と持ってきてくださるようになりました。

位牌堂におそなえされたお菓子
—檀家さんにも「おすそわけ」活動を周知いただいているんですね。大滝さんが活動を続けるための原動力などはありますか。
活動継続の原動力は、やはり家庭や団体からのお礼のメッセージですね。家庭も団体も、皆さんまめに声をくださるんです。
支援施設の子どもたちから心温まる手書きのメッセージが届きました。小さな手で一生懸命書かれた「おいしかったよ」「いつもありがとう」「うれしかったです」という言葉とカラフルな装飾に、私も嬉しくなりました。
そのメッセージをお寺の掲示板に貼ったところ、それを見た檀家さんたちが「こんなに喜んでくれるのなら」と、次からはより多くのお供え物を持ってきてくれるようになったのです。

施設の子どもたちからのメッセージ
お供え物はおはぎとかぼた餅も多かったんですけど、だんだん消費期限がちゃんと書いてあるものがおそなえされるようになってきました。相場効果で年間40個ぐらいのおすそわけを家庭や団体に送れるようになりましたし、子どもたちの感謝の気持ちが、新たな善意の輪を生み出したと思います。家庭や団体からの温かいメッセージが原動力となり、私だけでなく檀家さんたちも一生懸命おそなえしてくださるようになったことは嬉しいです。
妻も檀家さんが大きな袋いっぱいにお菓子や果物を持ってきて「これ全部送ってください」と直接依頼されたりすると、「箱詰め頑張らなきゃ」と思っているようです。家庭に送る時は「ちょっと古風なお菓子だけど、子ども達好きかな?」、「お菓子ばかりだと栄養が偏るから、麺やご飯も入れたいな」とか、給食のない夏休みの時は「お腹いっぱい食べられてるかな?」とあれこれ考えながら送っていると話していました。

お礼のメッセージを掲載した掲示板
—「おすそわけ」活動を5年間続ける中で得た気づきはありますか。
私は昔から、野菜の有機無農薬栽培を行っています。お墓にお供えされた花をたい肥にして、野菜を育てています。また、境内の小動物が亡くなれば、幼稚園の園児と共に土に埋め、供養をしています。諸行無常の教えの通り、すべてのものは常に移り変わります。お供えされた花が堆肥となり野菜を育てるように、境内で亡くなった小動物の命が土に還り、新たな命へとつながることを実感します。
「おてらおやつクラブ」の活動もまた、この無常の流れの中にあると思います。物も、人の想いも、一箇所にとどまることなく流れていく。その流れが、苦しさや寂しさを抱える子どもたちの心を温める一助となるのなら、社会の役に立っているという想いになります。
2024年、山形で実施された「おてらおやつクラブと一緒に子どもの貧困について考えよう」というイベントに登壇しました。そのとき、じゃあ自分の街ってどうなってるのか調べてみると、全くおてらおやつクラブの知名度がなかったことにびっくりしました。私みたいなお寺が庄内地域にもポツポツとあり、結構参加されているのかと思ったら全然少なかったです。もしかしたら、ある程度おそなえものをうまく活用できているお寺が多いのかもしれませんけどね。
私も今までは自分のお寺とおすそわけを必要としてる方のことしか考えてなかったのが、今後は地域にも目を向けないとと思い始めました。
—活動の視野を広げていただけて、とても心強いです。最後に、まだ活動に参加していないお寺さんに伝えたいことを教えてください。
おてらおやつクラブの活動は、仏さまの慈悲の心を社会に広げることができます。お寺にとっても、お供えを無駄にせず、有意義に活用できる良い機会です。あなたのお寺でも、この温かい支え合いの輪に加わってみませんか?
過去のインタビュー記事はこちらからご覧ください。
▼第1弾の寺院インタビュー 福島県 壽徳寺 松村妙仁さんの記事
https://otera-oyatsu.club/2024/01/temple-interview-jutokuji/
▼第2弾の寺院インタビュー 東京都 宝林寺 羽田慶仁さんの記事
https://otera-oyatsu.club/2024/03/temple-interview-hourinji/
▼第3弾の寺院インタビュー 京都府 實光院 天納玄雄さんの記事
https://otera-oyatsu.club/2024/06/temple-interview-jikkoin/
▼第4弾の寺院インタビュー 香川県 高松市仏教会 鎌田拓子さんの記事
https://otera-oyatsu.club/2024/10/temple-interview-takmatsu-bukkyokai/