「おてらおやつクラブ最終レポート」

認定NPO法人おてらおやつクラブは2021年8月~9月の期間、NPO法人ドットジェイピーさまからご紹介いただいたインターン生を受け入れていました。

今回のインターン生は同志社大学一回生の小保内亮(おぼない・あきら)さんと、京都大学一回生の小林慎太郎(こばやし・しんたろう)さんのお二人に来ていただきました。

インターンを通じて得た学びや気付き、それを踏まえての今後の展望などについてお二人から感想を頂きました。

本記事では、京都大学・小林さんからのレポートをご紹介しますので、ぜひご一読ください。

—▼以下、小林さんからのレポート—

みなさん、こんにちは!
8,9月と二ヶ月間おてらおやつクラブでインターン活動をさせてもらった小林慎太郎です!
今回は、

1.インターンをしようと思った動機・思い
2.活動内容
3.活動を終えて思ったこと

以上3つについて書いていきたいと思います。


1.インターンをしようと思った動機・思い

私は8、9月の夏休みにNPO法人ドットジェイピーのNPOインターンシップに参加しました。

私はこの春京都大学に入学したのですが、入学当初は授業もオンラインで特にすることもなく、退屈な日々を過ごしていました。そんな時にインスタにあるメッセージが届いたのです。
それは、「夏休みに開催される一、二回生向けのNPOインターンに興味はありませんか?」というもの。「インターンの最後には、活動の集大成としてプレゼン大会に出場できる」とも書いてありました。夏休みの予定は特になく、NPOが何をしているのか気になりました。何より「プレゼン大会で優勝したい!と思い参加を決意しました。

その後、約40のNPOの中からおてらおやつクラブを選択。その理由は、私は貧困問題についてとても興味があったことに加え、将来は食品系の仕事につきたいと考えていたからです。おてらおやつクラブは檀家さんや地域の方々からのおそなえをおさがりとしていただき、それを様々な事情で困っている子どもたちにおすそわけしているということで、「日本の貧困問題や食の大切さについて詳しく学ぶことができそうだ」と思いました。

インターン前は「おてらおやつクラブとは、お寺に子どもたちを集めて、おそなえのお菓子や食べ物を配ったり、囲碁や将棋などの遊びができたり、勉強などもできる場所を作っている団体」というイメージでした。そのため、初めて奈良の事務所に初めて行った時は想像と違いごく普通の事務所で、ギャップに驚きました。

2.活動内容

まずは団体の方の話を聞き、おてらおやつクラブの活動を知ることからのスタート。自分でも質問を重ね、団体の活動だけでなく、それまでほとんど知らなかった日本の子どもの貧困問題についても学びました。

テレビなどでよく見るいわゆる「絶対的貧困」については割と知っていたものの、日本の貧困問題は今まで聞いたこともなく、「日本の子どもの7人に1人は経済的な困難を抱えている」ということを聞いて衝撃を受けました。日本のような先進国でも格差の問題があることは知りつつも、まさかここまでとは。想像よりも何倍も大変な現状を知りました。

何度か事務所に足を運び、おすそわけ梱包のお手伝いもしました。正直、最初の方は「雑用やん」と感じていましたが、そんな私とは違い、職員の方は丁寧に心を込めてやっていらっしゃいます。「どうしてそんなに丁寧にやれるんだろう?」と疑問に思いながら作業していました。しかし、配送してから数日後、その疑問が払拭されます。「おすそわけ」が届いたことを報告するメールや手紙が届き、それを読むと次のような言葉が。

「明日への活力がもらえました。」
「私って生きてていいんだなって思えました。」
「困った時に頼れるところがあるってすごい嬉しいんです。」

自分が今までもらったことのないような感謝の言葉、思い、そして実際に困っている方々の生の声から見えてくる貧困の現状が書いてありました。
これらの声を読んだとき、すごく嬉しく感じました。感謝の言葉をもらえたことに加え、受け取ってくれた方々が「おすそわけ」によって生活が改善された・元気をもらった・笑顔が増えたと知れたことが何より嬉しかったです。「もっと頑張ろう!」と素直に思えました。

私はこれまでずっと次のような疑問をもっていました。

「NPOって利益も出ないのになんで活動できるんだろう?」
「どうしてこんなに他の人のことを考えて他の人のために尽くせるのだろう?」
「もしかしたら自分とは遠く離れた聖人なのかもしれない」

と。
先のようなお礼のメッセージに触れたとき、この疑問の答えが分かったような気がします。

企業は商品やサービスを提供してお金をもらいますが、NPOは商品やサービスを差し上げた先に感謝の「思い」がもらえるんです。これは実質的な「利益(りえき)」にはなりませんが心の「利益(りやく)」になります。

私は実際に活動に参加することでこの「思い」の力強さ、大切さに気づくことができました。そして「おてらおやつクラブは多くの人々の思いを受けとめているん」、「だから私から見たこの活動はこんなに輝いて見えるんだ」と思いました。これは私のインターン期間の中での一番の学びです。私もこの先生きていく上で他の人の気持ちを考えて行動することを大事にしていきたいです。

そしてこのインターン期間中、何度かプレゼンテーションをする機会がありました。私はもともと「プレゼン力の向上」という目標を掲げインターンに臨んだこともあり、体験をアウトプットする場に恵まれたのは幸いなことでした。特に印象深かった3つのプレゼンについてレポートします。

まず一つ目は「スタプロ」。これはドットジェイピー内で行う団体間対抗のプレゼン大会です。内容は、インターン期間に学んだことを活かし、大学4年間で行うことができる事業立案をするというもの。私はもう一人のインターン生・小保内君とともに参加したのですが、正直苦難の連続でした。9月終わりの大会に向け8月末から案を練り始めたもののかなり悩み…。時間をかけようやくできた案をおてらおやつクラブの方々に見せたところ、以下のような指摘が。

「インターンで学んだことをもっと盛り込んだ方がよいのでは?」
「実体験などを入れたほうが伝わりやすいのでは?」
「この事業は課題解決につながる?」
「ニーズはある?」

など、厳しくも優しい問いを投げかけてもらいました。
正直、めげそうになりましたが折れるわけにもいかず、二人で打ち合わせを繰り返し、他の事業を調べ、実際のデータを漁り、事業のシステムを練り直し、プレゼン原案を完成させました。

でも今考えるとダメダメです。聞き手の視点が全然なかったと思います。プレゼンは、聞き手の心に響かせなくては意味がありません。もちろんデータなども大事ですが、おてらおやつクラブでインターンをしたからにはそれ以上に「どうしてこの事業をやろうと思ったのか」、「この事業を通して何がしたいのか」などの思いを込めなければ事業とは言えません。僕たちはそれを学びきれていませんでした。

その後も何度も修正を重ねる中でおてらおやつクラブの皆さんから言われたのが、「まだ本番まで時間はある。最後まで粘れ!」という助言です。

そして迎えた本番。決勝でまさかのトラブルが。回線が悪くなり、Zoomが止まってしまったのです。10分しかない中の1分を失いました。
私は焦ってしまい、頭が真っ白になりながらも最後の一枚前のスライドまできました。ここで1分20秒余り。最後のスライドには40秒使いたかったのでこのスライドに残された時間は40秒。ただ練習ではここに2分使っていました。これはピンチ。パニックになった私はこのスライドを「読んだらわかります」と言って飛ばしてしまいました。それによって時間オーバーは免れました。

ただ、発表終了後、小保内君から電話がかかってきました。彼はどこか不満げで、「回線が悪くて申し訳ない」と謝ると「そこじゃない。そこはしょうがない。」と言っていて。「じゃあどこに不満が?」と聞くと

「君が最後のスライドで諦めたとこ。君忘れたの?おてらおやつクラブの皆さんになんて言われてきたか?『最後まで粘れ』でしょ?おてらおやつクラブはどんなトラブルが起こっても最後まで粘るんじゃないの?そこができんかったね。」

と。
私はそこで初めて「最後まで粘れ!」の意味がわかった気がしました。発表の準備が最後じゃないんです。発表のラスト1秒までが「最後」なんです。悔しくて涙が止まりませんでした。正直今でもかなり悔しいです。

でも、誇れるところもあります。それは、プレゼン作成の過程で「理念」や「想い」を真剣に見つめ直し、自分たちの等身大の言葉で表現しきったことです。「なぜこれをやるのか」、「この事業によってどんな未来が待っているのか」などの活動全体のイメージを自分の頭で考え、言葉を紡ぎ出すことは容易ではありませんでしたが、勝ち負け以上に大切な経験を積めたと思っています。

2つ目のプレゼンの機会は、おてらおやつクラブが啓発事業として行っている「オンライン活動説明会」でスピーカーをつとめたことです。こちらも何をどう話せば伝わるか、かなり悩みました。説明を聴きに来てくれた方々に自分が伝えられることは何なのか、自分は何を伝えるべきなのかが定まりません。私自身おてらおやつクラブの活動を理解しきれていない部分がたくさんあることも浮き彫りになりました。先の「スタプロ」と違い一人で行ったため、一緒にやる仲間はいません。

しかし、おてらおやつクラブの方々の手厚いサポートのおかげで、自分が伝えたいことや大学生ならではの視点を見つけることができ、本番を迎えました。一般の人向けということもありかなり緊張はしましたが、自信もあったので楽しくできました。本当によかったです。

そして最後、3つ目は「おてらおやつクラブの中の人に向けたおてらおやつクラブの説明会」です。まさに超難題。自分より活動に詳しい方々に下手なこと言ったら必ず違和感が残るのでいっそう入念に準備しました。また、おてらおやつクラブの説明だけでは飽きてしまうので、どうアレンジを加え自分らしさを出すかが大きな課題でした。

ただ「最後まで粘る」精神を忘れず、自分の将来の夢の話やバイト先であるすき家とおてらおやつクラブの違いの考察など、自分ならではの話材を盛り込み、無事に終えることができました。おてらおやつクラブの方々にもお褒めの言葉をたくさんいただき、心から「やってよかった」と思いました。

これら3つのプレゼン経験を通じ自分の思考力・表現力はかなり向上した手応えがあります。何より自分のプレゼンの芯を持つことができました。準備のために使ったルーズリーフは数十枚にのぼり、苦しいこともたくさんありましたがプレゼンが好きになりました。

3.活動を終えて

活動を終え、おてらおやつクラブに対するイメージはがらりと変わりました。おてらおやつクラブは、お寺の「ある」と社会の「ない」をつなげる活動です。すごく画期的な仕組みを学び、日本の見えにくい貧困について身をもって知ることができたのは本当に良い経験でした。何より一人ひとりの「思い」の大切さに気づけたのは大きな財産です。

そして活動を終えて強く思うのは「夏休みにインターンに参加してよかった。おてらおやつクラブの活動に参加できて本当によかった。」ということです。自分はこの夏休み、誰よりも充実した時間を過ごせたと思っています。この経験は今後一生活きていく確信があります。

私には大きな将来の夢があります。それは世界の貧困を無くしてノーベル平和賞を取ることです。具体的なプランもあり、その実行に向け動いているのですが本当に大事なのはそこではありません。一番大事なのは「他の人のことを考えて行動できる人物になること」。私がこのインターンで学んだ、一番大切なことです。この理念は私の尊敬するマザー・テレサが大切にしていることでもあります。私は将来このような人間になれたらと心から思いましたし、そのための第一歩をこのインターンを通して踏み出すことができました。

おてらおやつクラブの皆さん、本当にありがとうございました!!